「文化行政と文化芸術の推進について」
現在、地方創生や持続可能なまちづくりが求められているなか、全国一様のまちづくりではなく、その地域らしさをもったまちづくりという視点が大変重要になっております。
また、その地域らしさというものは、その地で育まれた歴史や文化・芸術といった営みを拠り所としながら、それらを各種の施策に活かしていくことによって醸成されていくものであると考えます。
私はこれまでも川越の川越らしさの源泉ともいえる歴史文化を活かしたまちづくりについて角度を変えながら度々取り上げてまいりましたが、本年度「第三次川越市文化芸術振興計画」が策定されたことや、ここ数年で国の法律の改正・制定などにより文化行政・文化芸術の位置付けが大きな転換期を迎えていることを受け、更なる推進に向けた質問を行ない、市制施行100周年を契機にした文化行政と文化芸術の推進に係る条例の制定を提言させていただきました。
細かい内容は下記の通りです。
■文化行政・文化芸術の位置付けの変化について
前計画の「第二次川越市文化芸術振興計画」は2016年から2020年を計画期間としておりましたが、その計画期間のなかで、国では法の改正や制定があり、文化行政・文化芸術はその意味合いにおいて大きな転換期を迎えました。
従来の文化行政は文化芸術・文化財等を対象範囲とし、他の行政目的に基づく施策とは別個に考えられてきましたが、現在では法の改正等により、文化芸術そのものの振興に留まらず、観光やまちづくり、国際交流、福祉、教育、産業その他の関連分野における施策も含め、文化芸術に関する施策を総合的・計画的に進めるものとしてその概念が変化してきております。
川越市では、その意味合いの変化についてご認識はあるものの、まだしっかりと整理できていない点を指摘させていただくとともに、新しい計画を推進していくなかで、川越にとってあるべき文化行政・文化芸術の推進のあり方を整理していっていただくよう申し上げました。
■文化行政・文化芸術予算について
現在、川越市の財政状況は大変厳しく、潤沢な予算をもって施策を推進していくことは困難な状況にあります。
そうした状況では、国からの補助金等を上手に活用していくことが重要ですが、川越市では文化芸術を担う文化スポーツ部創設以来、文化芸術振興課が新規に実施した事業に国からの補助金を活用した実績がないということを確認させていただきました。
そこで、その活用の重要性を指摘するとともに、積極的に補助金獲得に向けた取り組みを推進していただくよう申し上げました。
■文化行政と文化芸術に資する計画と条例について
川越市は「文化芸術振興計画」を県内でもいち早く策定しておりますが、一方で、文化芸術に資する条例については制定しておりません。
現在、県内で計画を策定しているのは埼玉県と川越市以外では5市、条例を制定しているのは埼玉県と5市1町あり、そのうち埼玉県と4市は条例と計画をそれぞれ持っており、条例を持つ1町においても計画の策定意向が確認できております。
自治体が独自に条例を策定することは、目的やビジョンを明確にし、実現への仕組みを体系的に構築すること、計画の策定根拠を位置づけること、文化政策の継続性を担保するなどの意義があり、条例を持たないまま計画を先行することはそうした意義による裏付け、背骨が通っていない状態であるとも捉えることができます。
川越市は、元来、行政市民共に歴史や文化・芸術を大切にしてきており、来年には市制施行100周年という歴史ある節目を迎えます。
市制60周年には市民憲章が制定され、その一番上には「郷土の伝統をたいせつにし、平和で文化の香りたかいまちにします。」ということが明記されました。また、70周年には市立美術館の検討が開始され、80周年に会館しております。更に、90周年にはビエンナーレから続く「小江戸川越トリエンナーレ(美術際)」が開催される等、周年の節目節目において行政・市民が一体となり、「文化の香り高いまち」実現のための取り組みが推進されてまいりました。
そこで、今後の川越のまちづくりにおいて、重要な意味をもつ、文化行政・文化芸術に係る条例の制定に向けて、市制施行100周年を契機に取り組んではいかがかと提言させていただきました。
■条例制定に関する市長の答弁
市長からは「文化芸術の振興に関する条例を制定することにつきましては、一定の意義があるものと考えております。川越市文化芸術振興計画審議会の議論の中でも条例があることが望ましいとのご意見もいただいておりますので、条例を制定することで、市民にどのような影響が出るのか、また、どのような効果が期待できるのか、この条例が単に宣言的なものではなく、どのような実効性を高められるのかなどについて、市民ニーズや先行事例などを十分に調査研究してまいりたいと考えております。」といったご答弁をいただきました。
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